寝る前に(0703)
今日の帰り道の
— りーな (@Riinagisa) 2018年7月3日
忘れたくないこと。
○満員電車のお兄さんのシャツの匂い
○刈り上げヤンチャ系お兄さんのキューティクル
○ロン毛お兄さんのシャンプーの匂い
特に何にもない一日だった。
昨日、下北を歩いていたら倒れてきた工事現場の看板。
下敷きになった私の親指の疼きも、無かったことのように。
初めて仕事帰りに行ったバンド。
そんなバンドが解散するということも、忘れているように。
なんにもない一日だった。
忘れ物をした。名刺を忘れてしまっていた。
何もないから定時で帰った。
電車内はぎゅうぎゅう。
私の頭は、他人の男性に挟まれていた。
過去の男のかおりがする。
右前にいる男性からだ。
上京してから今まで彼の事なんて思い出す事はなかったのに。
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「匂いが一番記憶に焼きつくんだよ。ねぇ」
本当にその通りだ。
その男のセックスは無味無臭。印象には残らないものだ。
唇だけはヤケに大きく柔らかかった。
それが故に口づけは、私を飲み込んでしまうのではなかろうか。包み込むキスだった。
毎回、行為が終わると一人玄関を出て安物のタバコを吸いにベッドを出た。
私はその間を
好きかもわからない
その男に抱かれたことの背徳感を生み出す時間に充てていた。
...前言撤回。
彼は少し腋の臭う人だった。だから、それは印象に残る。
何度か私はその男の家を訪ねた。
思えば、初めての一人暮らしの異性の部屋である。
何本もあるギター。
積み重ねられた平成初期の漫画やギターマガジン。
調味料は冷蔵庫に入れられることはなく、
台所の窓のちょっとしたスペースに埃をかぶって並んでいた。
いかにも男子大学生の部屋だった。
地元では一番難関な旧帝大に通っていた。
バンドマンなのだという。
たまにパチンコに行くという。
よく麻雀をするという。
私が、その男について知ってることは多くはない。
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その男と同じ匂いが、した。
ほかの2つも書いていたいが、もう寝たい。
シャンプーの香り漂うロン毛のお兄さんは、ギターを片手に駅からすぐの音楽スタジオに吸い込まれた。
きっと、今夜の練習もとうに終わっているのだろう。そして眠りにつくのだろう。
あ、明日で定期券が切れるや。
私も、
おやすみなさい。