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恋人のいる町に台風が猛威を振るった翌朝
午前9時37分
汗をかいたカフェオレを片手に2ケツする女子高生の揺れるスカートと、風を吸い込み膨らんだブラウスに、私はとても泣きたくなった。
彼女はどうにも若く見える母親の漕ぐママチャリの後ろに、慣れた様子で座って遠くを眺めていた。
私が、その姿に見とれていると
彼女も振り返り目があった。
一目惚れとはこの事だろうか。
心の中で呟いた。
そうか、学校は新学期が始まった頃だろうか。
9時もとうに過ぎている、
私は少し駅へ足どりを早めた。
如何に被害がひどかったか朝のワイドショーがこぞって特集を組んでいた。
画面に映る大荒れの被害映像と、テレビの奥の窓から見える青色が、どうにも極端で
なんだか他人事のように思えて仕方なかった。
なんだか、映画みたいだなぁ。
どうしても会社に行きたくなくって
昨日の残業を盾にして、1時間いつもより遅く出社するとデスクにメールを入れた。
憂鬱だった気分がフッと軽くなる。
窓から吹き込んでくる風が心地よい。
のんびりと、大きめの氷をカップに3つ
湯をポットに沸かし、フィルターから落ちる熱いコーヒーでそれらをゆっくり溶かした。
久しぶりのアイスコーヒーは
少し薄かった。
もう秋か。